(下関市立考古博物館パンフレットより)

下関市立考古博物館は山口県下関市綾羅木所在の綾羅木郷遺跡の開発業者による遺跡破壊と文化財保護の狭間の中で文化庁による史跡指定をきっかけに平成7年に開館しました。
綾羅木郷遺跡は、戦後自動車エンジン部品製造の鋳造鋳型に必要な珪砂(けいしゃ)の採掘により大規模な郷台地削平という緊急事態の中でどのようにして遺跡を開発から守るかという問題提議を全国に知らしめた遺跡の一つです。
ベトナム戦争により珪砂が輸入できなくなったことが大きな理由とされていますが、史跡指定を恐れて指定前に大量の重機を入れて郷台地を削平しようとした業者と文化財関係者や市民団体との攻防の歴史がこの考古博物館開館の背景にありました。
緊急調査では1000基以上の貯蔵用竪穴が確認され、貯蔵用竪穴群を取り囲む環濠がありその規模は幅2m、深さ3m、断面V字状で数次にわたり造られたようです。
これだけ多数の貯蔵用竪穴が確認されながら住居跡は全く確認されておらず、重機による周辺台地の削平の影響を受けたのではとの指摘もあります。
綾羅木郷遺跡が開発行為で削平を受けていなければ、九州北部の環濠集落や土井ヶ浜遺跡の渡来人との関係など、倭国のクニの成り立ちに大きな証言をしてくれていたものと想像され、改めて文化財保護の大切さを感じた次第です。
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下関市立考古博物館