山字文鏡は中国・戦国時代に盛行した鏡で、三山鏡、四山鏡、五山鏡、六山鏡のバリエーションが知られている。
羽状の地紋に3個から6個の「山」の字形の文様を配し、鈕座は方形のものと円形のものがある。
中国大陸での出土地域は、安徽省、江蘇省、河南省、湖南省、湖北省、四川省、江西省、広東省、陜西省などの長江流域から中国南部の諸地域となっている。この中で四山鏡は湖南省を中心に最も多く確認されており、国内の美術館・博物館においても収蔵例は多い。(中国各地の博物館及び個人蔵・兵庫県黒川古文化研究所・同白鶴美術館・同古代鏡展示館千石コレクション・京都国立博物館・東京都根津美術館村上コレクションなどの各所蔵鏡)
他の山字文鏡の確認例は極めて少なく、三山鏡は孔祥星・劉一曼著『図説中国古代銅鏡史』中国書店1991にフランスの個人蔵鏡(面径18.2cm)*が掲載されているが、国内では古代鏡展示館千石コレクションに小型(面径11.7cm)で地紋と「山」字文のみのものが確認されているにすぎなかった。
今回ご紹介する三山鏡は面径19.2cmと大型であり、各「山」字文の間にそれぞれ霊獣(虎・鹿?)を配置しており、フランスの個人蔵鏡とは「山」字文の傾き方向が異なるものの意匠的には似ている。このタイプの三山鏡の国内での確認例としては初めての可能性がある。
五山鏡は今回ご紹介するものの他は中国湖南省長沙市出土鏡・同常徳市出土鏡・上海博物館蔵鏡などで、国内では泉屋博古館・根津美術館村上コレクション・古代鏡展示館千石コレクションの所蔵鏡が知られている。
六山鏡は五山鏡よりも確認例が少なく、中国歴史博物館蔵鏡・上海博物館蔵鏡や国内では東京国立博物館蔵鏡、古代鏡展示館千石コレクション蔵鏡があり、本サイトで紹介する六山鏡は公開されている国内事例としては三例目となる。